無限提言121 回 5 月号

どういう思いをベースにするのか

思うようにならない人を「なんとかしたい」と試行錯誤されている方は多いと思います。 けれども、何回言っても聞かない、変わらない、そればかりか反発される等々、なかな か思うようにならないことが多いものです。結局は、「何を言っても無駄だ」と諦めたり、 「本人が気づくしかない」と関わることを避けるようにもなるのではないでしょうか。心 中を察するに、相当な苦悩や葛藤があるのではないかと思います。 思うに、そもそも人は思い通りにはならないものなのではないでしょうか。自分自身 すら思うようにできないことが多いのではないかと思います。つまり、「思い通りになら ない」、その認識が先ず大切なことだと思います。  その上で、結論的には、人間尊重・相手尊重の思いに立つことが大切です。確かに、 「なんとかしたい」と思うその多くは、決して自分のためではないでしょう。相手のため、 お客様のため、あるいは、みんなのためだと思います。  ところが実際には、相手にわかって欲しいという『自分の思い』が強くなってはいない でしょうか。つまり、相手のことを思っていても、自分優先になってはいないでしょうか。 「なんとかしたい」という思いをベースにするのか、相手を尊重しようという思いをベー スにするのかによって、すべてが違ってきます。  たとえば、「何回言っても聞かない」と相手を問題にするのでなく、「何回か言った程 度ではまだ足りないのだな、もう少し工夫をしよう」と自分の問題として捉える。また、「こ うして欲しいけど、どう思う?」「この日までだと助かるけど、どうだ?」と、相手の思い を尊重したうえで、こちらの意向を伝えるというような違いになるのではないでしょうか。

思いと伝え方

あるリーダーは、「相手の思いを尊重し、自分の思いをしまい込めばよいのでしょうか」 と。そういうことではありません。リーダーとして言うべきことは言うし、指示も注意も アドバイスも、やるべきことはやります。  また、あるリーダーは、「相手によっては言いづらいです」と。言って変わるかどうか は相手の問題ですが、言うかどうかはこちらの問題です。  さらには、「言うべきことを言えば、さらに頑なに拒否されそうです」とも。  こちらの思いが上手く伝わるかどうかは、自分自身の課題です。つまり、思いと伝え 方の両方が大切です。相手を変えたいという『自分』が強ければ、話し方や話す場所を 変えるなどの工夫をしたところで、相手には入りません。かといって、思いは正しくとも、 的外れなやり方では、上手くはいきません。

相手の思いを叶える

思うようにならない人とどう向き合うとよいのか。哲学的には、相手の思いを叶えた分 だけ、相手はこちらの思いを叶えてくれる。これは本質です。 思いを叶えるとは、今ある具体的な要望に応えるばかりではありません。実際には、思 いを受け止めることが相手の思いを叶えることになるとも言えます。 言ってもやらない、何か言えば反発する等々の問題は、よくよく話を聞けば、指示に不 満がある、よかれと思い指示と違うことをしている、能力や経験が不足している、ある いは、素直に聞けない要因が他にもある等々、様々な事情があるのではないでしょうか。 つまり、相手の思いを受け止めようともせずに、人を動かそうとしても、なかなか難し いのではないでしょうか。あるスタッフのことで顧客からクレームが入り、注意した時のことです。そのスタッフは、 「ハイ」と返事をしますが、なかなか改善しません。それで再度、話すと、「自分として はこういう思いでやっていました、私は悪くない」と怒るわけです。なので今度は、その 思いを聞くようにしました。結局、思いをすべて吐き出してはじめて、納得するわけです。 要は、思いを吐き出した分しか、こちらの思いは入らない。相手には相手なりの言いぶ んがあるわけですから。  指示に反対するつもりはなくとも、「そうは言っても・・・」「でも、現場は・・・」「私 としては・・・」というような思いがあれば、その分だけ自然と行動は鈍くなるものな のではないでしょうか。  最後に、哲学の実践とは、一回で何か劇的に変わるというようなことはありません。 何度も何度も、相手と向き合いつづけるなかに変化というものが起こってくるのです。 ある意味、変化するまでやりつづけることが物事に取り組む姿勢とも言えます。そのプ ロセスの途中で諦めないことが大切だと思うのです。