無限提言126 回 10 月号

信頼される一人の存在

先のオリンピックにおける各国選手団のユニフォームや、大会エンブレムは強いこだ わりやオリジナリティを感じるものでした。その決定までの過程には、多くの時間と人 の力が結集されていることでしょう。迷ったり、悩んだり、様々な意見を聞いたりと紆 余曲折しながらも一つのかたちに決定する。そこには大変なエネルギーが費やされてい ることを感じます。企業においても名刺やパンフレット、そして、シンボルマークやコー ポレートロゴには会社の強い想い、主義主張がつまっていることと思います。こうした デザインに限らず何かを決定していく、物事を決定するプロセスは実に難儀なことと思 います。私は、一つの物事をつきつめて、決定していくそのプロセスそのものに価値を 感じるのです。そこで私たちは、物事を決定する過程において「衆議を経る」ことが大 切であると、メッセージしております。それは「1.問題提起(打ち出し)をし、2.全 員で検討し、3.決定・結論、とのプロセスを経ることです」と。ところが、実際の現 場においては、この「衆議を経る」ことが難しいと言うことをよく耳にします。トップリー ダーがスタッフに問題提起をし、意見を求めても「特にありません。よく分かりません」 と、形だけの意見聴取になってしまいますと。または、スタッフ一人ひとりの異なる意見 を、なんとかひとつにまとめようとすると「いや、自分の意見は違います」と。結果的 にまとまらず、バラバラになってしまう。また、あるリーダーは、全員で検討する時間や 余裕などないと、次々と決定事項を一方的に伝える。すると、現場は不満で一杯になっ て混乱してしまいましたと。「衆議を経る」と聞けば、なるほどそうかとなるが、実際は「衆 議を経たら反対にまとまりません」となることが多いようです。そこで大事になるのは、 信頼される一人(トップリーダー)の存在です。要するに、トップリーダー自身に対する 常日頃からの信頼感や、スタッフの納得性が大切だと思うのです。その存在があるから こそ、様々に個性あるスタッフが賛成・反対と自分の意見を言ったうえでも、最終的には、 その信頼をベースに一つにまとまっていくのではないでしょうか。では、トップリーダー に対する信頼、もしくは納得性がなければ、「衆議を経る」ことはできないのでしょうか?

信頼の種

そもそも、トップリーダーの判断は現場スタッフとギャップがあるものです。それは、 責任感や経験値、また能力に違いがあるためです。そこで、トップが現場とのギャップ に対して向き合っていくことが、必要なのではないでしょうか?一方、現場スタッフは納 得が不十分だとしても、決定した通りに行動します。そして、トップリーダーもそれをフォ ローしていく。そうした繰り返しのなかで、少しずつプラスの結果が出てくる。その結果 に「なるほど、そうか」と実感を得て、はじめて納得が後からついてくるのです。トップ リーダーに対する尊敬心や信頼する心は、その納得性が積み重なり、築かれていくので はないでしょうか。  また、トップリーダーでも間違いはあります。望んだ結果ではなく、失敗してしまうこ ともあります。 そのような時は、現場からの納得性も得られず、信頼につながらないこともあるでしょう。 しかし、そこで大切なのは、トップリーダーの“ 潔さ” であり“ 謙虚な振る舞い” です。 「ごめん」と言える潔さ、「次はこうしよう」と改める謙虚さが信頼につながると思いま す。たとえマイナスの結果であっても、リーダーの振る舞いひとつ(種)で信頼につなが ることがあるのです。あらためて、信頼を勝ち得てから、「衆議を経る」ということでは ありません。信頼を勝ち得るためにも、みんなの意見を大事にしたいという思いで「衆 議を経る」ことに挑みましょう。なかなか意見が出なくとも、粘り強く聞いて、一人ひと りの意見を調整しながら一つひとつやっていく。そして、少しずつ信頼を得ながらスタッ フの意見を総合して、「みんなでがんばっていこう」という状態を作り上げていくのです。 そうするなかから、「自分たちの意見も反映されているな」という「信頼の種」が生まれ てくるのです。そして、その一つひとつの信頼の種は、スタッフ自身の意見や、より活発 な意見を生み、やがて組織を力強く推進していくエネルギーになると思うのです。

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