無限提言136回 8月号

トップリーダーの生きざま

語り継がれる生き方がある。昭和の時代に生きたエンジニアであり、企業再建に奔走した実業家、土光(どこう)敏夫(としお)氏。彼の普段の生活は感服させられるほど質素。決して蓄財家でもなく、生活費以外の多額の私財を学校創設の為に寄付されていました。また、国連での演説により、世界の注目を集めたホセ・ムヒカ元大統領。報酬の大部分を財団に寄付し、必要最小限の住居に中古の自家用車が話題になった。そうした彼の日常生活から“世界で最も貧しい大統領”と呼ばれていました。
決して、質素倹約を推奨しているのではありません。こうした生き方に触れる度に、人間的魅力を感じるのです。また、その人間的魅力の本質とは、その人の人生観であり、人生哲学ではなかろうかと。そこで痛切に感じることは、経営を支える大きな要因とは何かということです。それはやはり、トップリーダーの人生観だと思うのです。
トップリーダーの生きざまが、会社経営に反映されるばかりではなく、様々な諸問題の遠因になっているように思えてなりません。

ある中小企業のトップリーダーは、家庭を犠牲にしながらも、強い責任感と懸命な努力によって業績向上に努めてきた。現場では、常に先頭に立ち、地域や業界の要職を任せられるなど、人間関係も築き上げる。やがて経営が順調になると、その一方で、ストレス発散とはいえ、徐々に夜の街に繰り出す頻度も増え、車は高級車にと。時には、度が過ぎ、私生活の乱れが生じてくることも見受けられました。高級車が良い悪いではなく、危惧されることは、本来の自分自身を見失ってしまうことです。往々にして“会社経営”と“プライベート”をどこか立て分けて、自身の“生きざま”が関係しているとは思えないようです。
しかし、トップリーダーの振る舞いはどこかで見られています。さらに言えば、そうした生きざまが、様々な事象に表れてくると思うのです。だからこそ、正しい人生哲学にこだわり、追求したいと思っております。

心の風邪

それでも人間は本当に弱い。弱い側面があると意識しなければいけません。業績が良くなると、有頂天になり、いつしか傲慢になってしまう。もしくは、周りから褒め称えられるうちに、ついつい浮ついてしまいます。反対に悪い時には、忠告や指摘にも耳をかさず、強がってしまう、あるいは消極的になり、自信を失くしてしまうこともあります。これらは、トップリーダーに限らず、人間が陥りやすい心の風邪であり、しかも、自分の意に反し、知らず知らずに侵されてしまう病です。そこで、大事なことは、常日頃の予防です。それは、良い時も悪い時も、「そもそも自分は・・・」と言い聞かせ、本来の自分自身を忘れないことです。

私自身も結婚式場の現場では、1日2組の司会を担当していました。毎回、脚は震え、のども渇き、緊張が止まりません。また、毎年行う新発式にて、皆様の前で行うスピーチにおいても同様です。しかし、こういう自分がなくなったら、辞めようと決めています。つまり、怖いのは慣れてしまうことであり、当たり前になってしまうことです。こうした本来の自分自身と向き合い、弱い自分と闘うことも、予防の一つだと思っています。

人生観や人生哲学といっても、簡単なものではないし、押しつけられるものでもありません。出会いや体験の積み重ねが生き方となり、人生観になっていくのでしょう。そして、根本に何を持って立っているのか、生きているのかによって、見え方も瞬間的に変わることもあります。
私たちは、心の風邪に打ち勝つ生き方を、正しい人生哲学を根本にした潔い生き方を、共々に目指してまいりましょう。

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