相談できる人

久しぶりの本コラムとなります。各方面から「無限提言は?こんな時こそのアンリミでしょ!」とお叱りの声も聞こえてきます。我々を思って言ってくださっていると有難くお伺いし、机に向かい筆をとらせていただきました。(実際にはパソコン入力ですが・・)

新しい生活様式が叫ばれる中、いま、コロナ第3波が襲ってきております。このほぼ10か月間、不安と恐怖、そして諦めにも似た自身の内面と必死に挑戦してきたというのが率直な心情です。「前年比○○%ダウン」「時短営業要請」「感染者過去最高」・・テレビやネットを開けば、こういったニュースばかり。当事者でなくとも、否、当事者であれば当然のこととして心が折れてしまう。私たちの内面に蓄積したストレスも、計ることはできないものの、相当なものであろうことは想像に難くない。

これまでも、ビジネス現場において、過度なストレスに心が病んでしまう方々に対し、国はメンタルヘルス不調者の予防策として、ストレスチェック制度を義務化するまでになりました。この制度は、経営者と本人に、ストレスの軽重を気づかせ、職場改善につなげる目的があるようです。
どうしたらストレスが解消されますか?その対処法は?と。どうしても話は、ストレスそのものが問題となりがちです。
そこで、先ず大事にしたいことは、私たちは、平時においてでもストレスのなかに生きているという認識を持つことだと思うのです。そもそも地球上に存在する限り、常に重力というストレスがかかっています。飛躍しているかもしれませんが、生きていれば、必ずストレスはあります。つまり、ストレスのなかに生きているのです。
しかし、実に厄介なことは、人が感じるそのストレスの程度は、一人ひとり皆違う。それぞれに違うストレスを抱え、生きている。そこが難しい。今回のコロナの問題でも、人によって捉え方に違いが有る。一見やり過ぎと見えるほどに防御策を講じる方もいれば、それ程気にしていない方も。どちらが良い悪いを言いたいのではなく、一人ひとり違うということに対し、互いの関係性においてもストレスをより生じやすくなってしまっている。人は、ストレスによって鍛えられもするが、ストレスに耐えられる限界値もあります。本人にとっての過度なストレスは、病や事故をも引き起こしかねません。
また、落とし穴もあります。それは、感染拡大防止のために本人としては精一杯頑張っている。感染を恐れ人との対面、接触を避けることにより、結果、自分を客観視できなかったり、自分自身を見失ってしまうことです。

そこで大事になるのは、「相談できる、話せる人の存在」です。あの人には本音で話せる、本気で受け止めてくれるという存在は、極めて大事になります。本人が持つストレスは周りから見えないし、特定もできません。自分自身が苦しい時に、心が折れそうな時に、何でも相談できる存在を身近に置くことです。そうすれば、現実のストレスはなくなりませんが、自身の内面にあるストレスが緩和できるのです。人と人の距離(ソーシャルディスタンス)は作らなければならない今ですが、心と心の距離まで作ってしまってはいけないと思うのです。

今回のコロナで、デジタル化が進みました。技術の進化は目覚ましく、今ではどこに居ても直ぐに、このPCやスマホを通じて対面できるのですから活用しない手はありません。(と言っている私自身、実はWEB会議等慣れないのが実情なのですが・・)あらゆる手段を使って、普段にも増して共有、連携、更には心の交流を大切にしていくことが益々重要と感じます。

 

持つべきストレス

相談できる人の存在。そうはいうものの、本音で相談できる人、支えとなる存在がいない。そこで、どうすればよいのかと思われるかもしれません。
ここで、やはり“聞く”ということの大切さを確認しておきたいのです。私たちは、親や先生、人生の先輩から様々なことを聞いて教わり、育てられました。聞くことで、成長をしてきました。しかし、年齢を重ねるにつれ、次第に自ら聞くことが少なくなってしまう。聞いて、成長してきたのに、聞かなくなれば、成長も止まってしまいます。実は、この素朴に“聞く”ということは、自身のキャパシティを開き、拡大していることでもあるのです。同時に、自己感情中心の自分から、相手感情優先への挑戦ともなっているのです。

日常の現場でいえば、例えば、遅刻してきたスタッフがいるとします。頭ごなしに「何やっているんだ!」と叱る。一方、先ずは「何かあったのか?」と聞く。これは、大きな違いです。
とかく、自己感情を優先すれば、ある意味自身はスッキリすることも、一時的には有るかもしれません。が、相手に余計なストレスを与え、結果、より大きなストレスが我が身に返ってきてしまう。つまり、私たちは自己感情をコントロールし、相手感情を優先するという持つべきストレスがあるのです。
とは言え、その場、その場で相手感情を優先することは実際に難しい。どうしても自分の感情が優先してしまう。ついカッとなってしまったり、場の雰囲気に乗じてつい言い過ぎてしまった等々・・・自己感情で失敗した苦い経験は私自身恥ずかしながら一度や二度ではありません。だからこそ、日頃の訓練により、どういう状況であっても動じない自分を鍛えていく。覚悟有る自身の内面を構築することが、ある意味、セルフコントロールすることにつながります。勿論、善き先輩からのアドバイスや指導を自ら求めることも大切です。

繰り返しになりますが、現実のストレスはなくならない。あらためて、聞くことを基としてまいりたい。ストレスを乗り越えたぶんだけ、後になってその苦しみの意味が分かる。そして、感謝ができるのです。こうした実践の努力が原因となり、結果として、心から相談できる人と出会える、或いは自身がそういった存在になれる事実に繋がていくのではないでしょうか。

ともあれ、このコロナ禍で、何が正しいのかが見えにくい昨今ではあります。私たちはヒューマニズムをベースに人間的な温かさを一人でも多くの方々に送って参りたい。繋がっていきたいと、スタッフ一同、誓い願っております。