このコロナ禍にあって、接触を控えなければならないときに営業!?と思われるかもしれませんが、今回はあえて「営業」をテーマに本コラムをお届けしたいと思います。

これまで、新たな顧客との接点の機会として、例えばイベントや展示会などがあげられますが、コロナ禍にあっては以前のような効果が期待できる状況ではないと思います。これまで訪問営業を中心に、所謂〝足〟での営業活動をしてこられた皆さんにとっても危機的状況が続いております。

一方で、デジタル化の波は年々大きくなり、顧客の6割は直接の商談や購買以前の段階において、デジタル情報から取捨選択しているとのデータもあります。コロナによって大きく様変わりしたビジネスシーンにおいて、私たちはどのように変革を進めていけばいいのでしょか?

 

主体性を持つ

少し前によく言われた“映える”という言葉が象徴される様にInstagram やLINE、facebookなどのSNSによる影響力は小さくありません。IT社会である現代においては、インターネットを活用した発信や告知、そして、口コミが営業活動の最前線として展開されています。ITの力を駆使することで、さらに多くのお客様に自社が認知されるかもしれません。

しかし一方で、商品やサービスが良くなければ売れない。また同様に、新製品やキャンペーンなどの企画、実際に来店して感じる店舗、担当するスタッフと、これらも良くなければ、お客様は他を選んでしまいます。
思うのは、『営業力』のなかには、IT、商品、企画、店舗、人間と様々な力が含まれているということです。つまり、『営業力』とは様々な力を持った『総合力』なのではないでしょうか。

しかし、営業という概念の中に、外に出て交渉すること、あるいは、情報発信と集客だと偏ってはいないだろうか。店舗スタッフによる一つの電話対応でお客様を失ってしまっても気づかない。それでは、懸命に契約を獲ろうと広告費を費やしたり、プロモーションをかけたり、外に出ても空しいばかりです。他の大事なものにも目を向けなければ、行き詰まってしまい、結果には繋がらないと思います。
そこで自分たちのIT力、商品力、企画力、店舗力、人間力は?とそれぞれ見つめ直し、強化することです。それでもトップリーダーは皆、それぞれの専門家ではありません。専門的な知識を持つ会社や人にこちらの想いや熱意を伝え、自分たちに不足している力を取り入れる。その際大事なことは、こちら側が専門家に振り回されてはいけません。大事なのは“専門家を使いこなせる我々”になることです。

つまり、こちら側が主体性を持つことなのです。“任せる”のではなく“使いこなす”。すなわち、専門家の力を借りて、最終的な判断はトップリーダーがしなければいけません。

実行段階にあっては、その主体性の中身には、トップリーダー一人では全てができないからこそ、社内外の人(他)の力を借りるという謙虚さも大事だと思います。そこには信頼という裏付けが非常に重要になってくることも添えておきたいと思います。

 

熱意は伝播する

それでも、その専門家が身近にいない。もしくは、資金に余裕がないから難しいという場合もあるかもしれません。しかし、主体者としてトップリーダーが熱意を持って営業力を強化すれば、その熱意は伝播し、色んなカタチに表れます。

随分昔の話ではありますが、私がある結婚式場に総支配人として赴任して間もない頃。当時、私は結婚式の企画と言われても分かりませんでした。そこで、他の各式場の企画を皆で収集し、全てを実行しました。今と違ってインターネットや雑誌媒体が豊富にある時代ではありませんでしたので、手分けして〝マンパワー〟で情報を集めました。情報を収集する中で、それだったらウチはこうやろう!もっとこうした方がお客様に喜ばれるはず!!と内部の盛り上がりも次第に高まっていきました。何とか喜んで頂こうと企画力や商品力、店舗力と、色々なところから取り入れて他にはない結婚式場のカタチができました。

そうした過程には、失敗やクレームもありました。しかし、満足して頂こう、喜んで頂こうという熱意は歓びや感動を生みだし、それはやがて勢いにもなりました。そして、さらに、熱意が冷めないように色んなことを変え続けました。それは、くたびれることでもありますが、変えた分だけ様々な反応があり、楽しくもあります。また、何より熱意を持続させるエネルギーになるのです。

熱意がなければ、たとえ色んなことをやっても、失敗も成功も味わえない。また、失敗やクレームを恐れ、スマートにそつなくこなすことで伝わるものがなければ“横並び”となってしまいます。大事なのは、「驚き」や「斬新さ」です。そして、リアリティある人と人との関係性です。

先に述べたように、いま世の中はデジタルに埋め尽くされている感があります。デジタルの弱みは、味覚と嗅覚、触覚に訴求できないこととある識者が話しておりました。どこか人間不在を感じさせます。接触を避け、飲食・アルコールも控え、三蜜は厳禁。感染を拡大させないため当然のことです。一方で、和気藹々(あいあい)とした懇親の機会や、思わず生唾を飲むような料理の味や香り、真剣かつ温かな友情あふれる対話の時を渇望しているのは、私一人ではないと思います。コロナ禍に有っては我慢の時ではありますが、正直そう思っています。待ち遠しくもあります。

話が営業から少しそれてしまいましたが、私たちは、熱意を持って、机上ではなく現場に立たなければ活きた営業力は生まれません。是非とも商売と云うか仕事の原点を見つめ直し、いずれ必ず収束するコロナに絶対に負けないで、様々なリソースを使って、他にはできない営業力を追求し続けてまいりたい。その弛まぬ努力の継続の中で、最近よく耳にする「推し」を獲得できるようになるのではないでしょうか。