無限提言134回 6月号

苦し紛れはいけない

最近、何社かのクライアントが新しい事業を展開されています。
『良かったですね』、『オープンが楽しみですね』と仲間からの祝福と励ましのエールが贈られる。みんな心から成功を願っている。一方で、笑顔でこたえるオーナーやトップリーダーの胸の内には、言うに云えない不安や悩みを常に抱えているのではないでしょうか。私自身も新規事業やリニューアルなどに関わるなかで、その大変さや難しさを痛感してきました。
また、『新たな事業展開を考えていますが、どうでしょうか』と、意見を求められる時がありますが、慎重にならざるを得ません。なぜならば、実際に、誰がやるのか、何処でやるのか、そして、どのような考え方を基に展開しようとしているかによって、すべてが変わってしまうからです。

さらに、事業計画を描き推進していくうえには、越えなければならない壁が、次々と現れます。第一の壁は、臨むにあたり、迷いを払拭し、意を決する自己自身の壁。第二の壁は、資金手当てが本当に可能かどうかという諸条件の壁。そして第三の壁は、当初の計画と実際の工事などに生じる現実のギャップという、計画と現実の壁です。敢えて、三つの壁としましたが、いくつもの難題が待ち受けています。
どうしても新規事業という表向きに目が向きます。しかし、内実は、こうした難題があるのです。そこで、私は思うのです。新規事業とは、実は、トップリーダーの夢や希望という想いを実現することだと。そうした、トップリーダーの想いによって、結果は大きく変わってしまうのではないでしょうか。

それだけに、危惧するのは、往々にして、苦し紛れで始めてしまうことです。分からないわけではありません。何とかしなければ、このままではいけないと思いながらも、どこか余裕があるうちは動けないものです。そしていよいよ苦しくなって決断する。
新規事業における一つの急所を凝縮して言うと、希望を持ってやるのか、苦し紛れでやるのかの違いにあると思っています。

正しい判断基準

希望や夢を実現するためにはどのように事業展望を描けばよいのか?
あるいは、苦し紛れになりそうな時に立ち返る術は?
そのためにも、正しい判断基準が求められるのではないでしょうか。
ここでは、二つの角度を提案したいと思います。

一つは“考え方と人と場所”です。
前述しましたが、“どのような考え方”で、“中心者は誰”で、“何処”でやるのか。ある意味方程式です。
とかく、この仕組みでやれば、何処で、誰がやっても成功しますという方もおりますが、一見正しそうで、実に危険だと思います。やはり、中心となる“人“が大事です。人によって変わります。そして、考えている事業は、展開する地域性によっても自ずと違ってきます。一つの成功事例を参考にし、研究することは大切なことですが、同じようにはいきません。極めてシンプルですが、とても大事だと思っています。

もう一つの角度は価値観です。“考え方”の基となる価値観が問われます。私たちは、“美・利・善”という価値を追求しております。そこで、事業内容を“美・利・善”の価値”に照らし合わせます。
例えば、ホテル・旅館や店舗のリニューアルをするとします。そこで、時代感覚を踏まえ、コンセプトやストーリーに沿った素敵なデザインという“美の価値”を追求し、“利の価値”としては具体的な価格設定やコスト等、事業として収益性を検討する。そして、事業の目的は、地域やお客様、スタッフの喜びという“善の価値”となっているのか。これらの価値は、お客様やスタッフはもとより、協力関係者の共感するものでなければいけません。時に成功を願うあまり、目先の利益にとらわれ犠牲を強いることも少なくありません。自分自身のみの価値観(独善的)に陥れば、決してお客様や社会には認められないのです。

様々な事業展開に挑む。しかし、未来は誰しも不安です。確かなことなどないからです。だからこそ、不安を上回る「希望」や「夢」の裏付けともなる正しい判断基準が大切です。こうした基準があることで、誤った決断をしなくても済むでしょう。そうした立ち返る術があることで、確かな前進ができるのです。

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