熱意溢れる社員はたった6%!?
米国最大の調査会社が行った「世界1000万人の就労者への調査から導き出したエンゲージメント※ データ」によると、〝熱意溢れる社員の割合〟という項目で、アメリカ及びカナダの企業内では全体の32%にあたる割合だったのに対し、日本は何と6%という結果だったそうです。調査した139カ国中132位と最下位レベル。〝どちらにも属さない派〟を除けば、70%がやる気のない社員だったとのこと。
調査方法やその中身、あるいは各国の就業状況(実力主義等)が結果に影響している面はあると思います。また「熱意」という目に見えないものでもあり、客観性に欠ける、あるいは熱意という言葉に対する意味合いの違いも有るでしょう。しかし、この結果には、ある種の驚きを覚えました。勤勉で、団結力があり、仲間を大事にし、愛社精神、帰属意識が高いのが日本人との印象が有ります。が、それらは既に過去のものなのでしょうか。
意欲的に仕事に取り組み、自身の課題にも積極的に挑む…そのようなスタッフを望むのはごくノーマルな事でもあります。働く本人にとって意欲をもって働いている状態こそ、最もその人らしい状態と思います。所謂、モチベーションが高い状態。一方で、どうしたらスタッフを奮起させられるのかと、頭を悩ませているリーダーが多いのも事実です。打開策はあるのでしょうか?
奮起させようとは思っていない?
これまで多くの経営トップと接してきた中で私達が感じることは、スタッフを奮起させることができる人とさせられない人には、考え方のベースに違いがあるのではないかということです。相手を奮起させられる人は、実は〝奮起させよう〟などとは思ってはいない。正しく言うならば、奮起させたいのは事実としても、もっと重要なこととして、目の前にいる一人のことを精一杯〝大事にしている〟と感じるのです。「奮起させたい」というのと「大事にしたい」との違い。スタートラインが違うということ。
また、いくら言ってもやらないという話もよく聞きます。その実態は、言われたことをやらないのではなく、やれるほど理解していない、あるいは、実行するための能力が不足しているケースが多く見られます。自分本位に考えてしまうと『なぜやらないのか?なんでできないんだ!?』との角度になってしまいがちです。
逆に、相手中心に考え、相手を理解しようとしたならば『今の段階はここなのだな。じゃあ今度は・・・』と、次のステップや手立てを考えるのではないでしょうか。
つまり、我々が追求するのは、一人の人間を如何に大事にできるかということです。
大事にする意識
アンリミ哲学の根幹は、ヒューマニズム(人間中心主義)です。哲学といっても、深く考えたり難しく考えることではありません。シンプルに、大事にしたいと思うことからはじまります。そして、その意識を持ち続けること。
しかしながら、現実はなかなか思うようにはいきません。相手が何を思い、何を望んでいるのかが分からないと的外れな対応になってしまう。創立者鈴木会長曰く「背中が痒(かゆ)いと思っている人に対して足を揉(も)んでも決して喜んではもらえない」と。あるいは策やテクニックに走り、表面的で伝わるだけの思いがそこに込められていなかったり。
相手も、口では感謝を述べながら、内面では不満を抱いていることもあります。
そして、実践しているつもりになって、知らずしらず自己中心の考えに偏り、相手の本当の姿が見えなくなってしまうものです。こんなにしているのに何で分からないんだ!と。
シンプルに相手の思いに立つのです。そして、相手のことを思い、相手の立場になって考えた分だけ、すでに、そのこと自体が激励にもなっています。
結局のところ、正論を説いたり、責め立てたところで、スタッフは奮起しません。人は、咎(とが)められたり非難されれば、反発したり、落ち込んだりするもの。また、奮起したとしても持続しないことの方が圧倒的に多いものです。そうした生身の人間の心情や心の機微を理解したうえで、一人ひとりを大事にすることです。
スタッフにとっては、今、精一杯やっていることを認めてくれたり、決意の持続が実は難しいということを分かってくれることのほうが、より決意を深めたり、改めて決意し直すことに繋(つな)がるのではないでしょうか。また、時には、私情を越えて、本人の可能性を信じるからこそ、基本姿勢を正すため厳しく臨むこともあります。大事にする故の行動と考えます。
「人間を知り、人間を大事にする」。このテーマに真剣に挑む過程において、私自身の体験ですが、何をするにも〝誰のために・・・相手のためと言いながら、実は自分のためなのでは?〟と意識してしまって、身動きできないようなことが有りました。怖くて言葉ひとつ発することもできないような状態です。
後になって思えば、それは、教習所での自動車教習のようなものかもしれません。はじめは、エンジンをかけて、ミラーで周囲を確認し、ギアを入れ、ゆっくりとアクセルを踏んで・・・一つひとつ意識することから始まりますが、何度も意識、練習していくなかで、徐々にスムーズな運転ができるようになるわけです。今は、アクセルもブレーキも一つひとつ確認しながら操作している訳ではなく、オートマチックに運転できているというのが実感です。これに似て、人に対する対応やその質も徐々に磨かれていくのではないかと思います。但しこれは、どこまでやれば、というものではありません。
ともあれ、大事にする意識を持つことです。このテーマにトップリーダーがどれだけ奮起することができるか。それに比例するかのように、スタッフは必ず奮起する、そう信じてトライしていきたいと考えます。
※エンゲージメント:「約束」「信頼」「愛着心」「思い入れ」「熱中度」など
参考書籍
P96 ヒューマニスト P128 人間関係
文庫版「創立者鈴木昭二」
P290 人件費 P215 喜びの提供