今年の8月、全国各地でサマーコンベンションと題し、弊社クライアントの方たちがそれぞれの地域で集い、合同研修会を開催しました。その場でも最近のそれぞれの状況が話題になり、「景気が良い業界も有るが、我々地方のサービス業を取り巻く状況は苦しい」、「人手不足で経営環境はますます厳しくなっている」といった皆さんの声を聞きました。業界によって多少の違いはあるものの、私たちは同じように厳しい現実のなかにいます。同じ日本という国、同じ時代のなかで生きているのだから、この現実は誰もが認識しているでしょう。

ところが、この現実をどのように感じるか、どう捉えるかとなると、人によって様々です。その研修会で私はホワイトボードに、「人間は事実のなかに存在し、思いのなかに生きている」と書きました。そして、こんな話をしました。『同じ「事実」に直面している私たちですが、そこから受け取る「思い」は千差万別です。人間は「事実」のなかに存在していますが、それぞれの「思い」のなかに生きているのです』と。

「思い」の強化

たとえば、厳しい状況に直面した時、経営者やリーダーたちはどのような「思い」を抱くでしょうか? きっと社風によっても、企業にいる人によってもそれは異なるはず。同じ会社のなかでさえ、「大変だ、赤字になってしまった。もう立ち直れないかもしれない」と思い込み、自分自身を見失って悲嘆に暮れる人がいるかもしれません。逆に、「確かに厳しいけれど、次の企画を成功させて、必ず乗り切れるぞ」と思い、状況を冷静に、そして的確に判断しながら元気を振り絞る人もいるでしょう。

このように、私たちは同じ「事実」のなかに存在していますが、色々な「思い」のなかに生きているのです。あなたはどちらですか? もし、前者のようなタイプの人は、後者のように前向きな思いを持つことを目指してほしいと思います。なぜなら、企業や社風というものは、一人ひとりの「思い」が集まって醸成(じょうせい)されていくからです。

「事実」はどのようなものであっても、「もう立ち直れない」ではなく「必ずよくなる」という「思い」を一人ひとりのスタッフが持っている企業、それが強い企業となるのです。

 

「思う」力には無限の可能性がある

視点を変えて「事実」と「思い」について考えてみましょう。

*「事実」……質と量でいえば「量」。誰にでも分かり、客観的に確認できること。

*「思い」……質と量でいえば「質」。目には見えないが、主観的に感じられること。

 

このように分類してみると、「事実」は多くの人が共通認識を持てますが、「思い」は人それぞれ捉え方に違いがあることが分かるでしょう。売上高や利益率といった数値の「事実」は同じように共有することが簡単ですが、もっと規模を拡大したい、もっとお客様に喜んでいただきたい、といった「思い」はリーダーによっても、スタッフによっても様々です。「事実」(量)だけを追求するあまり、「思い」(質)が低下してしまうという事例が多いなか、皆さんには「思い」(質)を大切にして、「思い」の共有をしながら、結果として「事実」(量)が増える、という成長パターンを歩んでほしいのです。たとえば、お客様の満足をという「思い」の強化が、売上や利益増という結果(事実)をつくりだすのです。

厳しい「事実」のなかにあっても、苦しいとか、もうダメだといったマイナスの「思い」に縛られないことです。必ず回復できるとか、もう大丈夫というプラスの「思い」を抱いてください。

私たちの「思う」力は無限の可能性を秘めています。たとえ周囲が壁で閉ざされてしまっているような「事実」に直面している人でさえも、「思い」はその現実を離れて自由に飛翔できるのです。

 

この度の台風15号によって被災された地域の皆様にお見舞いを申し上げると共に、一日も早い復旧を心より祈っております。

 

参考テキスト

『経営の人間学』

P9 「原因のない結果は有りません」より・・・「結果」

 

『創立者鈴木昭二』

P119 「思い」

P124 「大震災」