「どうしたならば、強固な会社組織をつくることができるのでしょうか」

との質問を経営者の方々からお聞きすることが有ります。それに対し、逆にこうお聞きします。

「社長、なぜ強固な会社組織をつくりたいのですか?」と。

 

「強固な組織」というと、働き方の多様化、個性の尊重、自由で伸び伸びとした気風などとは、どこか相反するように聞こえるかもしれません。私たちは個々の特徴を重要視しない・自己犠牲をともなう組織を良しとする考えは毛頭ありません。が、良い仕事、結果をもたらす一因として、組織力の向上、活性化はとても大事な要素だと考えます。

少ないスタッフで戦っている中小企業にとって、時に互いが互いを助け合い補い合える強固な組織を作ることが、たいへん重要なテーマとなります。

社員の事情を知ってこそ

結論からいうならば、トップ自らが、社員一人ひとりを深く知ろうとする考えや姿勢を持つことがベースにあることだと私たちは考えます。決して〝管理〟をすることではありません。「社員のことを知ろう!」というエネルギーと思いを持つことがとても大事です。そうした思いや姿勢によって、結果として、徐々に社員一人ひとりのことを知ることができるようになっていきます。

仮に従業員が数百人いる企業でも同じことです。トップが直接的にスタッフとの接点がなくとも、各部門長を通じてスタッフたちのことを結果的に知っているのと同じ状態にすることはできます。

「社員のプライベート面にはタッチしない」という考えの方もいるでしょう。それも大事な観点であることは承知しております。

ですが「トップが社員の事情を全く知らないあるいは、知ろうとしない」ことの方が問題です。社員のことを知らなければ、適切なマネジメントや経営実務は遂行できません。なぜなら、いかに素晴らしい理念や事業計画があったとしても、現場で実行・推進するのは社員一人ひとりだからです。

たとえば、プライベート面で大きな悩みを抱えている社員に重要な仕事を任せても、仕事に集中しきれないということが往々にしてあります。あるいは、リーダーに相応しいスタッフがいない状態で店舗を増やしたならばどうでしょう。社員の事情や力量を見極めずにプログラムを作っても、その効果は期待できないのではないでしょうか。社員の実力や能力だけでなく、それぞれが抱える事情を把握したうえで、人を中心に考えた経営をすることが大切です。

 

トップの哲学が問われている

少し話はそれますが、当社にも全国のクライアント各社にてハンズオン(直接的現場指導)型でクライアント支援を行っているインストラクション部門のスタッフがいます。彼らにもそれぞれに事情の違う家庭があります。また、各現場にはそれぞれに思うようにいかない現実を抱えながら、それでも必死に結果を好転させようと彼らは戦ってくれています。

それらすべてを知っているわけではありません。ですが、当社の代表として、または『名代』として、日々奮闘してくれている一人ひとりの思いを日々感じてもおります。彼らには感謝の思いしかありません。

 

社員を事業拡大や業績アップのための手駒のように考えたり、能力や成果だけで社員を見ていたのでは、やがては、仮に個々の能力は高くともそれぞれがバラバラな会社組織となる可能性は大いにあります。

能力の大切さを決して否定はしませんが、我々が目指すのは、信頼で結ばれた麗しい人間空間です。売上のためのスタッフではなく、理念や哲学、あるいは思いを共有し、それを実現するための本当の仲間や友となるスタッフが集まった組織体です。

つまり、人間中心の企業です。そのためには、社員の内情だけでなく、それぞれの『価値観』や『思い』を知ることが大切です。

目指す経営が『人間中心』なのか『会社中心』なのか、トップが問われているのは、まさにこの一点なのではないでしょうか。