コロナ禍の影響で、この一年、テレワークや在宅勤務が随分とひろがりました。通勤や営業訪問の移動時間が短縮できたなどの利点もありますが、その一方でチームビルディングや個々人の業務管理という面ではとても難しいとリーダー職にある方々から多く声をいただいています。

また、緊急事態宣言下にあって、時短営業や休業せざるを得ない、例えば飲食、サービス業の職場では、身体的な距離とともに、サービスの質を維持する上で大切な個々人のモチベーションやエンゲージメントの維持が難しくなっています。経営の継続含め不確実な今後に対するストレスも小さくありません。

ー新無限提言「ストレスのなかに生きている」参照ー

これは、コロナ以前からも実はあったことで、急激な環境の変化によって顕在化したと見ることもできますが、いずれにせよ、自分自身を含め人間のマネジメントは、どのような環境であれ難しいものです。

今回は、以前に取り上げた「個人面談(One on One)」に関するコラムを再確認して、その打開の道を探って参りましょう。

なぜ個人面談をするのか

思いを整える

ヤフー社はじめ近年では多くの企業が、個人面談の取り組みを実施されているようです。

アンリミではクライアント・リーダーに対し、スタッフとの一対一の面談や対話を促すことが少なくありません。一般的にも、社員の目標管理や実態把握などのために個人面談がなされていることが多いようです。そこで、なぜ一対一の面談や対話をするのか、また、どういう面談・対話をするとよいのか、改めて確認したいと思います。

さて、会社組織は、考えも価値観も一人ひとり違う様々な人間の集まりです。ですから、多くの企業では、大小の会議を通じ、目標や施策を共有し同じ方向へと向かうようにしていると思います。けれども実状は、会議が終われば、本当は反対だった人、意見を言えずにいた人、やる気を失った人、あるいは、勘違いや捉え違いをした人など様々あるのではないでしょうか。
そこで大切なことは、そうしたバラバラな思いを拾い集めて、思いを整えていくことです。仮に、「会議で決めたことだから」と一方的に押し付けたのでは、表面的には決めた通りに動いたとしても内実は上手くいかないものです。 思いを整えるとは、会社の意向に従わせるためということではなく、スタッフの思いや捉え違いをしっかり受け止めたうえでスッキリした状態にすることです。それには、個別の対応がどうしても必要になってくるのではないでしょうか。

要するに、会社の方針やリーダーの思いを一方的に伝えるばかりでなく、スタッフ一人ひとりが何をどう考え、どう思っているのか等々、様々な対話をすることがとても大切なことだと思うのです。

 

同じ仲間として

個人面談をする際のテーマは、意思の統一の他にも、スタッフ育成、スタッフを知る、信頼関係づくり、様々あると思います。
そこで思うことは、日頃の会話も少ない状態で個人面談をしても、どれだけ本当の思いを語ってくれるのでしょうか。あるいは、思いを伝えたところで、どれだけ本気で受け止めてくれるのでしょうか。
実は、面談をするからスタッフのことをよく知るのではなく、仲間としてもっとよく知りたいという一人の人間に対する関心があるから、知ることに繋がるのではないでしょうか。また、仲間として一緒に頑張ろうという思いがあるから、思いが伝わるのではないでしょうか。

危惧するのは、興味も関心もない状態で形ばかりの個人面談をすることです。話しやすい表面的なことだけを聞いてスタッフを知ったつもりになったり、要望や現状を聞くふりをして最後には思っていることを押し付けたり、あるいは、目標や課題に対する正論を説いて自分一人だけが満足したりと、無意識ながらも、そうしたことが往々にしてあるように思います。
共に働く仲間を、商品をつくる技術力、販売やサービスをする労働力、売上を上げる人員、要は会社組織の歯車と見てはいないでしょうか。一人ひとりを生身の人間として見ることがとても大切なことだと思います。

改めて言いますと、個人面談という形式が大切なのではなく、同じ仲間としての対話が大切なのです。問題を抱えているようならば話を聞き、行き違いがあるようならば話し合うというような、常日頃の対話です。チームワークや組織力が大切なことはみんなわかっています。しかし、お互いのことを理解せずにチームワークを発揮できるのでしょうか。業務上の連携や報連相だけでチーム力を発揮できるのでしょうか?

ともすると、業務優先になりスタッフとの対話が不足するものです。お互いに理解し合う対話や思いのギャップを埋めるような対話が日常的になされることが大切だと思います。


 

先述した通り、コロナ禍によって互いの対面も会話も少なくなっています。LINEやZoomなどWEBシステムが整ったとはいえ、心からの対話をすることは簡単ではありません。だからこそ、感染防止に配慮したうえで、質量共に一人ひとりに思いを寄せた私たちの実践が問われています。

「想いは距離や時間を越える」

いまこのような状況だからこそ、リモート(遠隔)によって生じた一人ひとりとの〝心の距離〟を埋める真剣な対話が求められているのではないでしょうか。