気楽に話し合える人がいる一方で、どうにも「苦手な人」っていませんか? 円滑な人間関係を築くことが得意な人でも、相性が合わない相手はかならずいます。上司や同僚だけでなく、困ったことに、自分の担当のお客様の場合もあります。そんな時、あなたはどうしていますか?

「イヤだなぁ」と思っているだけではいけません。でも、どうすればいいんだ? という現場の悩みに答えます。どんなに苦手な相手でも、よりよい人間関係を築く秘訣をお届けしましょう。

〔1〕人間関係を築く三つの基本

人間関係の悩みをいろいろと聞いてみるとある特徴が浮かび上がります。それは「相手」という共通するキーワードがあるのです。自分の意見や主張ではなく、相手の立場になり、「相手中心」の考え方と心構えを持つことが、人間関係を築く上で重要なのです。例えば、「相手を思う気持ちをなくさない」「相手を元気にする」「相手から嫌われない自分になる」「相手が興味を持っていることに関心を示す」「相手の価値観を大切にする」というように常に「相手中心」の視点が必要です。ここでいう「相手」とは、「苦手な相手」や「嫌いな相手」も含んでいます。「たとえ嫌い」でも、相手から嫌われない自分を目指してほしい」のです。どんな相手に対しても、よりよい人間関係を築くには、次の三つの基本を実践してください。

①相手を尊敬する

相手の言動や長所を尊重し、一人の人間として尊敬するように心がけましょう。

②相手を励ます

相手の立場を理解し、マイナス志向や弱気になっていたら励まします。落ち込んでいない場合でも、激励する気持ちを持つことが大切です。

③相手と歓び合う

お互いに嬉しいこと、楽しいこと、一緒に歓び合う機会を持ってください。同じ気持ちを体験すれば、一体感が生まれるはずです。

〔2〕ものごとの捉え方を変えてみよう

アメリカの有名な作家エレナ・ホグマン・ポーターの『少女パレアナ』をご存知です? 日本でもTVアニメ『愛少女ポリアンナ物語』として放送されたので、ご覧になった人も多いでしょう。

例えば、パレアナはものごとを次のように捉えました。孤児になった彼女が、叔母の家で与えられた部屋は、家具も何もない屋根裏部屋でした。一度はガッカリしたパレアナですが、すぐに「何もなければ片付けが早く済む」とものごとを前向きに捉えます。鏡がなくても「自分のソバカスが見えないから嬉しい」と思い直し、そこに喜びを見出すのです。ものごとをパレアナのように捉えると、いままでの私たちの捉え方も変わるはずです。捉え方を変えれば、苦手な人との人間関係も築くことができるのではないでしょうか。

次のような点についても、ものごとの捉え方を変えてみると、いままでとは違う自分を発見できると思います。

①人間の長所・短所

誰にでも長所・短所はあります。短所だけに注目するのではなく、長所を誉めるところから、苦手な人との人間関係が築かれていくはずです。

②部下への対応

仕事で失敗した部下に対し、「なぜ、できないんだ!」と叱責してはいけません。「どうしたら、できるようになるかな?」と相談するところから、部下との人間関係が築かれていきます。

③左右される感情

「なぜ相手は自分を認めてくれないのか」と怒るのではなく、「自分のほうから相手を認める」言動があれば、苦手な人との人間関係を築くことができるはずです。

④相手と自分

相手からどのように見られているかを気にするのではなく、自分の内面を見つめることで、自分の考え方、捉え方を客観的にチェックしてみましょう。

〔3〕誰もができる行動

「相手中心」の考え方を徹底し、ものごとの捉え方を変えられる人とは、どんな人でしょう? その簡単な具体例を紹介してみます。

  1. 利他的な行動で「相手に接する」
  2. 思いやりの心で「相手に接する」
  3. 慈しみの眼で「相手に接する」
  4. 笑顔で「相手に接する」
  5. 誠意のある言葉で「相手に接する」

このように、どんな相手に対しても「歓びを持ってほしい」という無心の気持ち、つまり見返りを求めない純粋な心が「相手中心」の人であり、部下とも人間関係を築くことができるのです。そのような人には、相手を思いやり、和ませる「癒しのパワー」が生まれています。これはお金をかけずに誰もができる行動なのです。

喜び(満足)を感じ元気に応対しよう

先ほどは苦手な相手との関係について解説いたしました。ここからは、自分の感情をいかにコントロールし、誰に会うときにも喜び(満足)を感じ、元気に応対することの大切さを述べたいと思います。

〔1〕笑うと若く、怒ると老いる

私たち人間は感情の動物です。出会う相手に対して感情が湧き起こり、その感情に左右されがちです。さまざまな状況のなかで「喜・怒・哀・楽」だけでなく、いろいろな感情が噴出し、ときには自分でも困ってしまう場合があります。

「喜・楽」の感情ならばいいのですが、「怒・哀」の感情が続くと、疲れてしまいますし、パフォーマンスも上がりません。そして、「喜び・楽しい」状態を保ち、笑顔でいれば気分や表情が若やぐのに対し、「怒り・哀しい」感情にとらわれていると、精神的にも肉体的にも老いてしまう。さらに、「喜び・楽しい」感情には、次のようなプラス効果があるのです。

?ここでは「喜び」や「満足」した気分による効果を列記してみましょう。

「喜び」「満足」によるプラス

*「希望」を得られる

*「自信」が持てる

*人生を信じ、生き抜く「勇気」が湧いてくる

*愛情を感じ、相手を「激励」できる

逆に「怒り・哀しい」感情には、次のようなマイナス要素があります。ここでは「怒り」や「不平不満」の要素を列記してみましょう。

「怒り」「不平不満」によるマイナス

*「失礼」な態度

*「悲嘆」に暮れた気分

*最悪の場合は「自殺願望」

*相手に対する「憎悪」

このように考えてみると、一目瞭然ですね。どんな人に会うときも「喜び」(満足)を感じて応対できれば、そこから波及するプラス効果は大きいのです。それに「笑うと若く、怒ると老いる」そうです、美容のためにも「喜び」(満足)の気持ちは効果があります。

しかし「嫌だなぁ~」と感じ苦手な相手に、とてもそんな気分になれない?という人も多いはずです。そんな人には「初めは演技でも構わないから、喜び(満足)の気持ちで会い、話してみよう」と呼びかけています。いつも「喜び」(満足)の気持ちを心がけていれば、それが苦手な人と応対するときの基本姿勢になっていくはずです。

〔2〕「元気」な自分になろう

誰にでも備わった性格やキャラクターがあり、それが個性を生み出しています。根っから明るく積極的な人もいれば、冷静で落ち着いた人もいるでしょう。どんな性格でも構いませんが、苦手な人と会うときは、自分のなかにある「元気」を大胆に表現してください。ちょっと努力し、いつもより「元気」な自分になってほしいのです。そこで「元気」な自分になるコツを紹介します。

①「元気」な人と会おう

私たちは環境によって変化し、人と人とは影響し合います。「元気」な人と縁を結び、よく会うようにすると、その人から「元気」をもらうことができます。

②周囲を「励ます」努力を

同僚でも先輩でも、周囲にいる人たちを励ましてみましょう。励ますには、相手が置かれている状況を知り、気遣う想いが必要です。そんな気遣いのパワーが、苦手な人に出会ったときにも「元気」を与えてくれるのです。

③素早い行動を

俊敏に行動すれば、気分も爽快になるはずです。スピーディーな行動にこそ、「元気」は宿ります。

④「上を向いて」歩こう

鏡の前に立ち、あなたの日常の姿勢をチェックしてください。うつむいていませんか? 背筋を伸ばして胸を張り、「上を向いて」歩こう。すると、身体から「元気」が湧いてきます。

〔3〕愚痴ではなく、感謝の気持ちを

それでは、苦手な人に対しても、喜び(満足)を感じて元気に応対してみましょう。単に想いを巡らすだけでなく、実行に移さなければいけません。ここで注意してほしいのは、次のポイントです。

①他人と比較しない

同じように目的を持っていても、その歩みには違いがあります。比較しないで、自分のペースで歩みましょう。

②いつもユーモアの精神で

話し合うときでも、ユーモアの精神を忘れないように心がけましょう。

③話し合える友の存在

努力を繰り返しても、苦手な人とすぐに会話が弾むわけではありません。いつでも相談できる友人の存在が大切です。

④希望を抱く

どんなにつらいことがあっても、希望を抱いていれば乗り越えられます。苦手な人とも、より良い人間関係を築けるという希望を失ってはいけません。

⑤前向きな気持ち

病に倒れると不安になり、目の前が真っ暗になるものです。そんな状況になっても、「必ず治る」という前向きな気持ちを持ち、どんな人とも良好な人間関係を築いてください。同じ問題に直面しているAさんとBさんがいるとき、Aさんは愚痴や不満で暗い気分になっていました。ところが、Bさんは歓喜と感謝の気持ちで問題に取り組んだのです。「何でそんなに・・・・・・」といわれるほど明るく、「楽観的すぎる」と批判されても、Bさんは愚痴をこぼさず、歓喜と感謝の気持ちに溢れています。あなたはAさんとBさんのどちらですか? 苦手な人にも喜びを持って元気に応対するには、歓喜と感謝の気持ちを持ち続けてほしいのです。

よりよい人間関係を築く基本は、相手を尊敬し、励まし、歓び合うことです。そこから湧きあがる「希望」「自信」「勇気」「激励」が苦手な人への基本姿勢ともなります。

あなたもきっと苦手な人との関係性の改善が出来るはずです。

苦手な人に親近感を持つにはー苦手イメージを変えるコツ

いろいろな物事に対して、私たちには「好き嫌い」という感情が起こります。食べ物でも人に対しても「好き・嫌い」の気持ちは生まれます。性格的に「合わない」相手に対して、あなたはどのように対処していますか?プライベートな人間関係ならば「嫌い・合わない人」を敬遠すればいいのですが、仕事の現場ではそうはいきません。

こうした苦手な人と、どのようにチームワークを生み出し、仕事をすればいいのか、その点について考えてみましょう。

〔1〕苦手な人と仲良くなる方法

一般的には苦手な人と仲良くなるわけがない、と思いがちです。仲の良いフリはできても、心からの親近感は持てない、と考えるのが普通です。そこで紹介したいのは次の四つの提案です。苦手な人にかぎらず、仲良くなりたい相手にも実践してみましょう。

①相手のことをまずよく知る

相手の趣味、好きなものを聞き、関係する情報などを提供してみます。さらには相手の仕事ぶりを見て、自分の考え方をやんわりと伝えてください。

②気に掛ける、声を掛ける、話し合う、心配する

相手に関心を持ち、挨拶し、お(しゃべ)り(雑談)をする。物腰の柔らかい言葉を掛け、「親しくなりたいオーラ」を出してください。距離感が縮まると同時に、相手の行動などが気になる気持ちが起こるはずです。

③相手の喜ぶことをする

話し合うなかで、どんなことすると相手は喜んでくれるのか、それが分かってきましたか?相手が本心から喜ぶことをしてあげれば、あなたとの人間関係は急接近します。

④一緒に行動する

問題がなければ、仕事先にも積極的に同行する、或いは相手の抱えている仕事を助けるなどして、共通の体験を増やしていきましょう。

「教えてください」という謙虚な気持ちで接すれば、嫌がる人は少ないはずです。これを繰り返せば、苦手な人に自分との共通点を発見し、意外な親近感が湧きます。そうなればもう仲良くなる一歩手前です。

次に、〔2〕の「親近感がわくコツ」を読み、イメージトレーニングしてみてください。ここでは若い人向けにお話ししていますが、もちろん中高年の方もぜひ応用してみましょう。

〔2〕若い人への提案「親近感が湧くコツ」

ここでは、Z世代やゆとり世代にあたる二十歳代や三十歳代の若い人たちが、苦手な上司や先輩に対し「親近感」をどうしたら持つことが出来るのか、そのコツをお伝えします。ちょっと大変ですが、次のことを自分に課してみてください。苦手な上司や先輩が輝いて見えてくるかもしれません。個人差があるので、誰にでも有効な方法というわけではありませんが、試してみてほしいと思います。ちょっと考え方を変えるだけで、苦手な相手のイメージが変貌すると思うのです。

①頑張ったとき、評価・共感してくれる存在(母親のイメージ)

一つの仕事を無事に終え、?自分でも頑張ったと思ったとき、相手が誰であろうと、誉めてくれたら嬉しいものです。「よくやったね、ごくろうさん」と声を掛けられたら、ホッとするのは当然です。苦手な上司や先輩が自分に声を掛けてくれたと、勝手に想定してみましょう。頑張ったとき、評価・共感してくれる存在、温かく見守ってくれる母親のようなイメージを抱いてください。すると、どんなに嫌な上司や先輩でも、穏やかで優しい感じがしてきませんか?

すぐには無理でも、何度かチャレンジしてみましょう。

②自分の手本となる存在(父親のイメージ)

あなたの周囲には尊敬できるけど、厳しくて苦手な上司や先輩はいませんか?そんな相手に接近するには、自分の手本となる存在・・・父親のイメージで眺めてみましょう。実際の父親のイメージを思い浮かべると、ガッカリする人が多い・・・と思うので、いわゆるカッコいい父親像をイメージしてください。苦手な上司や先輩に対して尊敬できる父親のイメージを持てれば、高い壁でも超えられるのではないでしょうか。

③似たような悩みを持つ存在(仲間・友人のイメージ)

人生の先輩たちは経験豊富で、何事もわきまえているように見えます。しかし、自分と年齢は離れていても、やはり迷い悩む存在なのです。そう思って、自分と似た悩みを持つ仲間や友人のように捉えれば、一気に親近感が湧いてくるはずです。「あの方(先輩・上司)だって十年、二十年前は自分と同じだったはず」と考えれば、かなり気楽に付き合うことができます。

厳しく頑固な上司や先輩が多くても、若い人が気分を変え、「苦手」というイメージを変えれば、世代間ギャップの半分以上はなくなるはずです。高く厚い壁のように感じるかもしれませんが、角度を少し変えると意外と乗り越えやすかったりもします。お互いに親近感が生まれ、それを広げれば、チームワークが生まれるに違いありません。

〔3〕その道のプロ・良き指導者を持とう

ここで述べてきた方法やコツを、ぜひ皆さんの職場で活用してください。しかし「実行したけれど、なかなか難しい」と思う方はたくさんいると思います。その理由を最後に述べておきます。

①自分を変えることは難しい

頭では理解しても実行するのは難しいし、特に自分を変なんえることは至難の業なのです。

②現実は、その道のプロに教わる以外にない

社内により良い人間関係や、素晴らしいチームワークを築きたいのなら、その道のプロに教わることが最善の方法です。

③良き指導者・アドバイザーを持とう

いろいろな企業を知っている指導者に相談できれば、それに越したことはありません。良き指導者・アドバイザーは企業にとって大きなプラスとなるのです。

当社では、対話を通じて経営者様の悩みを解決へと導く経営カウンセリングサービスを提供しています。主観では見極めにくい「根本的な」経営課題を探しだし、本質的なアプローチで解決に向けて伴走します。時代に適応しながら企業を永続的のある成長へとつなげるため、アドバイスをさせていただきます。「離職が止まらない」「迅速に経営課題に手を打ちたい」とお考えの際には、ぜひ当社までご相談いただければ幸いです。